赤ワインの醸造で重要な「房ごと発酵させる方法」
赤ワインにおいて、この「房ごと発酵させる」醸造スタイルは、大きく分けて3パターンあります。
炭酸ガス浸漬法(カルボニック・マセラシオン)の醸造スタイルによる有名なワインといえば、ボジョレー・ヌーボーです。ボジョレー・ヌーボーのあのバナナ、シナモン、チューインガムの独特の香りは、ガメイの品種特性によるものだと思っていましたが、「細胞内発酵」により生まれる香りだったようです。
WSET Level3では、ボジョレー・ヌーボーはもちろん、房ごと発酵させるスタイルのワインが結構重要で、この3パターンの違いを完全に理解し、結果どういうワインスタイルになるのかまで、記述できないといけません。
例えば、こういう問題。
ボジョレー・ヌーボーに期待される香りの特徴と、その特徴を達成するために使われているワイン醸造法を一つ挙げ、描写してください。
というわけで、図で表しつつまとめてみました^^;
炭酸ガス浸漬法:カルボニック・マセラシオン(Carbonic maceration)
果コウまでよく成熟した全房のブドウを使用する。
密閉容器に全房のブドウを入れ、炭酸ガスで満たす。 炭酸ガスにより、タンク内は酸素の無い状態になり、細胞内発酵がはじまる。 |
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アルコール度が2%になると、果皮が破れ果汁が出る。 一般にはこの段階で圧搾し、果皮と果汁に分ける。 果汁のみを酵母により、発酵を完了させる。 |
ブドウから色素は抽出されるが、タンニンはほとんど抽出されない。
ワインスタイル:
バナナ・シナモン・キルシュ・チューインガムのような特徴的な香りを持つ。
果実味が豊かで口当たりの良いものになる。
半炭酸ガス浸漬法:セミ カルボニック マセラシオン(Semi-carbonic maceration)
全房のブドウを、タンクいっぱいに入れる。 |
ブドウの重みで、下の方のブドウが潰れて、果汁がいくらか出る。 潰れたブドウが、自生酵母により発酵をはじめる。 |
発酵により、炭酸ガスが発生し、タンク内が炭酸ガスで満たされ、潰れていないブドウに対して細胞内発酵が始まる。(炭酸ガス浸漬法が生じる) |
アルコールが2%になると、果皮が破れ果汁が出る。 一般にはこの段階で圧搾し、果皮と果汁に分ける。 果汁のみを酵母により、発酵を完了させる。 |
房ごとのブドウと破砕したブドウを使う方法
全房のブドウと破砕したブドウを使用する。
1つのタンクに全房のブドウと、破砕したブドウを入れる。 房ごとのブドウは、破砕したブドウに覆われ、酸素のない状態になり、細胞内発酵が始まる。 |
発酵中にパンチングダウンを行い、ブドウの房は徐々に潰れていく。 |
シルクのような感触と溌剌とした新鮮な果実の特徴がワインに加えられる
炭酸ガス浸漬法 | 半炭酸ガス浸漬法 | 房ごとのブドウと破砕したブドウを使用する方法 | |
インプット | 破砕していないブドウの房のみを入れる | タンクいっぱいにブドウを房ごと入れる。 ブドウの一部が上の重みで潰れて果汁がいくらかでる | 「房ごとのブドウ」と「破砕したブドウ」 |
炭酸ガスによる密閉 | ブドウの房のみを入れて、炭酸ガスで充して酸素を抜く | 行わない | 行わない |
破砕 | 行わない | 行わない | 行わない |
アルコール発酵 | 行わない | 潰れて出た果汁が、自然酵母により発酵し始める この発酵により炭酸ガスが生まれる。 残りのつぶれていない果実に対し、「炭酸ガス浸漬法」が起こる | |
細胞内の発酵 | 細胞内の発酵が始まる。 アルコールが2%に達するとブドウの果皮が破れはじめ果汁がでる | 細胞内の発酵が始まる。 アルコールが2%に達するとブドウの果皮が破れはじめ果汁がでる | 房のブドウが、破砕したブドウに覆われ、酸素に触れることがなく、そのため細胞内発酵が始まる。 |
果帽管理 | 行わない | 行わない | 発酵中にパンチングダウン処理され、ブドウの房は潰れていく。 |
圧搾 | 果皮が破れはじめ果汁が出たら、圧搾され果皮と果汁に分けられる | 無傷のブドウが潰れ始めて果汁が出てきたら圧搾して果皮と果汁を分ける | |
アルコール発酵の完了 | 果汁のみを酵母により発酵を完了させる | 果汁のみを酵母により発酵を完了させる | |
ワインの特徴 | 色素は抽出されるがタンニンはほとんど抽出されない。 キルシュ、バナナ、チューインガム、シナモンの香り 果実味豊かで口当たりのいい柔らかいワイン | 細胞内発酵からのアロマ(フレッシュフルーツ)とブドウ品種からのアロマの統合。 | シルクのような感触と、溌剌とした新鮮な果実がワインにあらわれる。 |